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小説 【彩られた無色】  一覧

 

 

小説 【彩られた無色】 第9話 どうして、私を責めたりしないのだろうか

 

 

 

 

小説【彩られた無色】

第10話 幸せになってはいけないのに。

 いろいろなことに戸惑いを感じている。
 自分の中に芽生えた感情に慣れることができない。
 楽しい、嬉しいという感情が怖い。
 私には必要のない感情だと思っていたし、そんなことを感じるなんて思っていなかった。というよりも、自分にはその感情を抱く資格がないから、許されないことのように感じている。

 楽しいとか、嬉しいという感情は人間として当たり前の感情だ。
 それでも、私はそんな感情を抱いてはいけないのだ。

 その感情を抱いたことはある。
 でも、その感情は私を裏切ってきた。
 嬉しいと思わせてくれた他人の行為はすべて嘘だった。その人がうまく立ち回るための嘘の感情で、私のそのための道具でしかなかった。
 
 あとで酷い仕打ちを受けたし、その行為が嘘でしかないとはっきりと言われた。
 私という人間は他人が生きていくための道具で合って、そこに喜びを感じてはいけないし、楽しいとも嬉しいとも思ってはいけないのだ。
 楽しくても嬉しくても、幸せだと感じても、それは確実に私を裏切るのだから。

 それでも私は社会の中で人と関わって生きていかなくてはいけない。
 だったら自分のことを道具だと割り切るしかない。他人に利用されるだけの都合のいい道具。
 だから、いろいろなことに耐えられる。どんな仕事を任されても、つらくても、体調が悪くても。
「私は、道具なのだから」
 そう思えば、どんなことでも耐えられるし、裏切られてもなにを言われても傷つくことは無い。
 私の「個」など必要はないし、私の感情なんて意味がない。
 ただ言われたことをして、それが理不尽であっても自分はそのための道具だからと割り切っていればなんのことはない。
 だから、私は今まで生きてきたし、それなりの生活ができていた。
 そこに私自身の感情が現れたら苦しくなるのだ。

 誰かと話をするときは、顔色を窺いながら適当に笑っている。
 そこに私の感情はない。
 
 相槌を打ちながら、適度に自分の意見を伝える。もとより私の意見を聞く気などないのはわかっているから、否定されたところでどうでもいい。
 その場に合わせて生きるしかないのだ。
 相手が欲しい言葉を与えるだけ。私の意見や感情など、あってないものなのだ。

 任されたことに対してベストを尽くすだけ。話を合わせるだけ。
 だから接客業が好きなのだ。笑顔で対応して適当に会話をしているだけで、話した内容はデータとして記憶して次の機会に活かす。
 別に相手のことに興味は無い。接客なんてそんなものなのだ。
 相手のことなど好きでもない、ただのお客さん。そこになんの感情もない。仕事だから笑っているだけ。

 本当の私は人間など大嫌いだし、関わりたくもない。
 ただ、働かなければ生きていけないから、嫌なことを仕事にしているだけ。そのほうが、働いている気がする。

 もしかしたら、自分の感情に価値がないから適当に笑顔を振りまいて会話を楽しむ接客業が合っているのかもしれない。
 だから、海野さんという存在に戸惑ってしまう。
 仕事でもないし、彼と会ったからといって利益があるわけでもない。
 それでも、一緒にいると楽しいし、また会いたいと思ってしまう。
 仕事以外では人と関わりたくもないし、楽しいとか嬉しいという感情を抱きたくもない。

 そんな私を知ってか知らずか、彼は私の領域に自然に入ってきた。傍にいることが嫌ではない。むしろ楽しいと感じてしまう。
 必要以上の関りを避けてきた私にとっては異質の存在でありながら、利益もなにもなしに会う相手。

 これ以上、彼と関わってはいけない。
 最後に傷つくのは私なのだからと頭では理解していても、心は彼に会いたいと強く願う。
 喜びの感情を与える人を信用してはいけないのだ。
 今まで拒絶してきたのに、彼にはそれができない。
 私はどうしてしまったのだろう。
 もしかしたら、これ以上ないくらいに傷ついてから死んでしまうのだろうか。
 神様が、最期のプレゼントをしてくれたのだろうか。
泪-rui-

 

 

 

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  • あなたは、あなたを大切にしてください。私は私を大切にします。
    泪-rui-
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