【第19話】 都合のいい神様は存在しません。

  • 2020.03.29 Sunday
  • 15:47

 

 

こちらにも掲載しています。

 

都合のいい神様は存在しません。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893566751

 

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第19話

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「とりあえず、これをプレゼントするわね」
 
 
渡されたのは、B5サイズのノート。
 
「好みが判らなかったから、水玉柄にしたんだけど、よかったかしら?」
「はい、ありがとうございます」
 
お父さんからのアドバイスで自分でもノートを買ったし、持ってきている。
 
都さんからも貰ったとうことは、やはり必要な物なのだ。
 
 
学校でノートを取るのは、好きではない。
黒板を写すだけで、つまらないのだ。
 
「古書喫茶Note」には、黒板もホワイトボードもない。
ノートは、何に使うのだろうか。
 
メモを取るだけなら、もっと小さなものでいいのに。
 
 
都さんはカウンターの中に入って、大きめのバッグからノートとスマホを取り出した。
私も座って、必要な物を入れたトートバッグから筆記用具とノートを取り出す。
 
 
「スマホも出していいわよ」
 
仕事中なのにいいのだろうか。
 
「調べ物をするときに必要でしょう?」
「タブレットでもいいですか?」
「もちろん」
 
SNS等、誰かと連絡が取れてしまうスマホは電源を切っておいたほうがいいと、お父さんに言われた。
その代わり、調べ事専用のタブレットを持つことが好ましいということだ。
 
大事な用事があるときは、「古書喫茶Note」か都さんに連絡を入れるから問題はないらしい。
 
 
前のスマホでは、SNSを使っていた。
常に友だちと連絡を取るために必要だったから。
 
交友関係を保つには、すぐに返事をしなくてはいけないのだ。
 
休学して、スマホを変えてからは友だちと連絡を取っていないので、SNSもしていない。
 
スマホを見る時間も減った。
 
その代わり、お父さんの本棚から気になったものを借りて読んでいる。
 
片手で数えるくらいしか本を読んだ記憶はないけれど、読み始めたら面白くて癖になった。
お父さんが、たくさん本を持っていることも知らなかったのに。
 
 
「必要な物を揃えたのね」
「言われるがままに…って感じですけど」
 
必要な理由はお父さんが説明してくれたけど、よく判っていなかったりする。
 
「それでいいのよ」
 
都さんは、優しく微笑む。
 
正直なところ「古書喫茶Note」で何をするのかも、未だに判っていない。
 
 
「コーヒーが覚める前に始めましょう」
 
 
私にとって、今日が新しい始まり。
なにが始まるのか、まだ判らないけれど。
 
とにかく、始まるのだ。
 
都さんに色々と教えてもらう。
頑張ろう。
 
 
「まずは、葉月ちゃんが何を知りたいのか、教えてくれるかしら?」
 
思わず、ポカンと口を開けてしまった。
 
 
都さんが、教えてくれるのではないのか…?
 

 

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【第18話】 都合のいい神様は存在しません。

  • 2020.03.28 Saturday
  • 13:53

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第18話

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「おはようございます」
 
 
「古書喫茶Note」の扉を開けると、珈琲のいい香りがした。
 
都さんはカウンターで本を読んでいる。
私を見て微笑む顔は、とても幸せそうだ。
 
そういえば、本を読んでいるところは、あまり見たことがない。
 
 
「おはよう。荷物を置いてコーヒーでも飲みながら、予定を確認しましょう」
 
 
彼女は、いつも穏やかだ。
 
返事をしてから奥の部屋に荷物を置いて戻ると、コーヒーが用意されていた。
 
 
都さんから、大きめのマグカップを貰った。
渡し専用だと、用意してくれたのだ。
 
 
雑貨屋に売っているようなものではなくて、陶芸品とでもいうのだろうか。
少し、形が歪んでいるけれど、なぜか気品がある。
 
白っぽいような、灰色のような下地に黒い猫が描かれている。
 
明確に「かわいい」と言えるかというと違うのだが、見つめていると、じわじわと可愛さが滲み出てくる。
 
私がいつも使っているのは、人気のキャラクターがプリントされた、どこにでも売っているものだ。
 
 
陶芸品だから、高価なものだろうと思ったが、カップの裏に値段シールが貼ってあり、2500円と記されていた。
 
テーマパークでお土産として売られているカップも、同じくらいだ。
 
陶芸品で、同じものは他にないのなら、とても価値があるのではないだろうか。
 
 
値段を見て、いろいろ考えている私に都さんは、言ったのだ。
 
 
「その値段で、あなただけのものが手に入るのよ。素敵でしょ?」
 
値段をはがさなかったのは、わざとだったのかもしれない。
 
 
都さんによれば、同じデザインでも1つ1つが違うらしい。
 
 
”プリントされたものは、すべて同じ”
 
 
学校では、”みんな同じ”であることを求められる。
 
それが、友人関係を保つコツなのだ。
 
 
私には、その意味がわからなかったし、無意識のうちにストレスを感じていたのだろう。
 
耐えきれなくなったとき、都さんに出会った。
 
 
「今日から、よろしくお願いします」
 
深々と頭を下げた。
 
お父さんから、お世話になる相手には、頭をちゃんと下げて丁寧に挨拶をするものだと教わった。
 
 
都さんの目が少し細くなって、美しく微笑んだ。
 
綺麗な動作で立ち上がり、頭を下げた。
 
 
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 
私の手を取り、優しく包む。
 
 
その手は、柔らかくて、優しくて、安心する。
 
 
「これから、一緒に頑張りましょう」
「はい」
 
 
”一緒に”という言葉に、なぜか安心を覚える。
 
 
少し視線を落としたら、カウンターの上にノートが置かれているのに気づいた。
 
 

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【第17話】 都合のいい神様は存在しません。

  • 2020.03.15 Sunday
  • 07:53

 

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第17話

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「お母さん、おはよう」
「はい、おはよう」

今日は「古書喫茶Note」でのバイト初日だ。
バイトと言っていいのかわからないけれど、なんかよくわからないのでバイトっていうことにした。

「お父さんは?」
「急な打ち合わせが入ったって言って、慌てて出かけたわ」

社長さんである哲也さんから、部長に任命されたので忙しくなったのか、
最近は、なにかと忙しそうだ。

とはいっても、早く出社するは極稀にあるけれど残業は殆どない。

哲也さんは「残業する奴は無能だ」ときっぱり言い切ってしまう人らしい。
残業代で稼げなくても、もとの給料が高いし、能力があれば上がる。
さらには、仕事が成功すれば賞与もあるから問題はないと言っていた。

これだけ聞くとホワイト企業のように聞こえるが、やる気がなかったり向上心のない無能な社員は平気で解雇するか、自ら辞めていくのだという。
そうは言っても、研修はしっかりするし、人材育成にも力を入れているから、かなり評判はいい会社らしいよ。

「葉月ちゃんの初出勤をお見送りしたかったって悔しがってたわ〜」
「幼稚園の遠足じゃないんだから」

そういえば幼稚園で初めて遠足に行くとき、お父さんも見送りにきたなぁ。
今思うと、ものすごく心配していた気がする。
その日は、お父さんが早く帰ってきた。

「本当、親ばかよねぇ」
「で?お母さんのこれはなに?」
「ん?」

テーブルの上に並んでいるのは、朝ご飯とは思えないものだった。
大きめのハンバーグ、エビフライ、目玉焼き、ポテトサラダ、フルーツの入ったヨーグルト。
飲み物は、グレープフルーツジュースと牛乳。

「…足りなかったかしら?初出勤だから張り切ったんだけど…」
「いや、そうじゃなくて…。いや、もういいや」
「葉月ちゃんの好きなものを作ったのよ〜」

確かに私の好きなものだけど。
夕飯の残りとかならわかるけど、昨日はビーフシチューだったし。

夜にジュースを飲もうと思って冷蔵庫を開けたら、食材が多いなぁとは思ったけど、
まさか朝ご飯のためだったとは。

いったい今日は何時に起きたのか…。

「都さんのところに行くって決まってから、葉月ちゃんがウキウキしてるから…私も楽しくなっちゃって」
「…恥ずかしいから、そういうこと言わないでよ」

お母さんは、しっかりした人だとは思っているけれど、天然とでもいうのだろうか。

「さ、食べましょう」

休学してから、家族でご飯を食べることが増えた。
今まで、朝はギリギリに起きていたから食べなかったし、
学校帰りに友だちに付き合ってカラオケに行ったりとかで夕飯も一緒に食べなかった。

それでも、必ず私の分を用意してくれていた。
朝ご飯は、冷蔵庫にしまってお母さんが仕事から帰ったときのおやつとして食べていたらしいし、
夕飯は、私が夜食として食べたり、お父さんが食べたりしていたようだ。

文句を言うわけでもなく、ずっと用意してくれいた。

それに気づいていなかったわけではない。
けれど、気づかないフリをしていた。

距離を置いていたのは、両親ではない。
私が勝手な思い込みで、距離を置いていた。

学校の友達は、親のことを悪く言っていた。
だから、自分の親も同じだと思い込んでいた。


よく見たら、よく考えたら…。
私の両親は、友だちが文句を言っているような人たちではなかったのに。


朝ご飯を食べ終えて、お母さんは仕事に向かった。
私は、食器を洗ってリビングを掃除してから出勤する。

これも、両親と話し合って決めたことだ。
慣れてきたら、朝ご飯を作ることも検討している。

というか、都さんに料理も教わっていく予定なので、料理を覚えてからになるが。


今日の豪華な料理を作った調理器具とかは、すでに洗い終わって片付けてあったので、
朝食で使った食器類だけを洗っておく。


それが終わったら、「古書喫茶Note」へ向かうのだ。

 

 

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