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小説 【彩られた無色】  一覧

 

 

 

小説 【彩られた無色】 第18話 認めてくれる人がいたのに、どうして私はツラいのだろう。

 

 

 

 

第19話 どうして、あなたは笑うのだろう。


海野さんがどうして私の部屋で眠っている。どうして、なぜ。
疑問は色々ある。部屋にいる立雄は店長が招き入れたからだろう。
けれど、なぜ彼は来てくれたのだろうか。

私は、彼を拒絶したのだ。

いきなり連絡を絶って、もう二度と会わないと決めた。そんな女に、また会いに来てくれるなんて、わけがわからない。

もしかして、怒っているのだろうか。
私を罵倒するために、ここに来たのだろうか。

拒絶されたことを怒っているんだ。
傷つけられたから、私のことを傷つけにきたのかもしれない。

しかし、私を贖罪を受けなくてはいけない。

逃げたいけれど、逃げてはいけない。


それでも、ここから逃げたくて溜まらない。

彼が、どうしてここにいるのだろうか。その答えは、わからないけれど。
こうして来てくれているのだから、それに答えるしかないのだ。

今まで彼から受けた優しさを裏切ったのだ。
私は、罪を償わなくてはいけない。

海野さんを起こして、話をするべきなのだろう。
けれど、身体が動かない。呼吸が浅くなる。

どうすべきかは理解しているのに、身体も頭もうまく働かない。
どうしたらいいのか。


そのとき、大きな音を立てて、目覚まし時計が鳴った。

慌てて止めようとしたけれど、テーブルの上から落ちてしまった時計は大きな音を立てた。

そこにある、大きな塊が少しだけ動いた。
私は彼の顔を見つめたまま、動けなくなってしまう。
目を覚ましてしまうのだろうか。彼に、なんていえばいいのか。

逃げてはいけない。
そうは、わかっている。
この場から消えてしまいたい。意識を手放すことができたなら、どんなに楽なのか。

どうか、目を覚まさないで。

そんな願いは書ぬわけがなく、いつのまにか彼は私を見ていた。


そして、いつもと同じ顔で笑うのだ。


「おはよう。よく眠れた?」


どうして、そんな顔をしているの?
怒ってくれたのなら、まだよかったのに。

 

 

 

泪-rui-

 

 

 

 

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小説 【彩られた無色】 第17話 優しさを気付かせない人が、すぐ傍にいた。

 

 

 

 

第18話 認めてくれる人がいたのに、どうして私はツラいのだろう。
 

 
 
「つらい思いをさせたね」
 
 
 店長は、私の頭を撫でた。
 誰かから、そうされることは本当に久しぶりだ。
 
 泣きたくなるくらい、嬉しい。そして、それが苦しい。
 
 
「恵梨香が、すべてを拒絶していたことは知ってる」
 
 
 わかっていて、私を傍に置いていてくれたことを、今更になって知ったことを申し訳なく感じた。
 私は店長の気持ちを知らずに、傷つけていたのだ。
 
 
「けれど、あなたが生きるために頑張っていたのも知ってる」
 
 
 その言葉が、嬉しいけれど、素直に喜ぶことができない。
 
 
 私は、今まで誰一人として信じることができなかった。
 あなたのことを信じていなかった。
 そんな私に暖かい言葉をくれるのですか?
 
 そんな資格が、私にあるのだろうか。
 
 
「今まで、よく頑張ったね」
 
 
 たくさんの想いに気付かずに、あなたを傷つけた私には、その言葉をもらう資格なんてないのに。
 
 どうして、涙なんて出て来るのか。
 喜んでいいわけがない。
 
 私は、この人のことを信じていなかった。
 貴方の優しさを裏切っていたのに。
 
 
「ごめんなさい」
 
 
 こんな言葉では足りないし、許されるわけがない。
 
 
「大丈夫よ。あなたが苦しんでいた気持ちは、誰にもわからないわ」
 
 
 見ないようにしてきた、忘れようとしてきたことが、頭の中に浮かんでくる。
 すべてを忘れることができたらいいのに。
 記憶を失うことができたら、どんなに幸せなのか。
 混乱してしまいそうになる。頭の中がグチャグチャで、今まで押し込めてきた感情が溢れ出してくる。
 
 声を出すことができない。
 目の前が真っ白になって、私は意識を手放してしまった。
 
 
 

 目を開けると、ベッドの中にいた。
 毛布がかけられて枕元にはペットボトルの水が置いてある。
 
 感覚としては、数分ではあったけれど、窓の外を見ると明るくなっていた。時計は、朝の6時を指していた。
 
 一晩、眠っていたようだ。
 
 
 店長は、帰ったようだった。
 仕事があるから仕方がないし、なにを話していいのかもわからないから。それを気遣って、帰ってくれたのかもしれない。
 
 深く息を吐き出して、ペットボトルに手を伸ばした。
 喉が異様に乾いている。
 
 
 なにかが動いた音がして、そちらを見て驚愕した。
 
 
 壁に寄り掛かって、寝息を立てている大きな塊があったからだ。
 
 
 
 そこには、寝息を立てた海野さんがいた。
 
 
 泪-rui-
 
 

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小説 【彩られた無色】 第16話 自分で壊した世界の音がする。

 

 

 

第17話 優しさを気付かせない人が、すぐ傍にいた。
 
 
 
 いい匂いがする。
 
 そんなことを思って目を覚ました。
 いつの間にか眠っていたらしい。窓から夕陽が見えたから、かなり眠っていたらしい。そこまで考えたところで気付いた。いい匂いがするのはなぜだろう、と。
 
 
「おはよ」
「…おはようございます」
 
 
 私がいつも座っている座椅子の上で店長がオムライスを食べていた。
 
 コンビニで買ってきたものだけど。
 
 
「お腹すいたでしょ。うちのもので悪いけど、食べなさい。そろそろ起きると思って、チンしておいたから」
 
 
 ローテーブルの上にオムライスがもう1つ置いてあった。
 いい匂いの正体はオムライス2つ分だったらしい。
 
 いろいろ聞きたいことがあったが無駄だということはわかっているし、なにしに来たかがわからないほどバカではない。
 
 
「いただきます」
 
 
 向かい合わせに座って、オムライスを食べ始める。
 そういえば碌に食べていなかったなぁなんて考えていた。
 
 店長はキッチンでお湯を沸かし始めていた。文句があるわけではないけれど、他人の家で戸惑いもなくお茶を煎れている店長は凄い人だと思う。
 
 
「で?なにがあったの?」
 
 
 そう言われても驚かなかった。
 そのために来たのは明白だったから。答える義務はないけれど、お世話になっている人だから答えるべきなのかと悩んでしまう。
 
 きっと、海野さんから相談を受けたのだろうなと予想はできる。
 
 
「ただ、少し疲れただけです」
「まあ、恵梨香は働き過ぎな部分があるけどね。私が色々任せちゃうからってのもあるから申し訳なくは思っているけどさ」
 
 
 目の前に出されたのは私の好きな紅茶だった。店長は見たことのないマグカップを持っている。
 私の視線に気づいたのか呆れたように笑った。
 
 
「人が来るなんて想定してないだろうと思ったから、自分で持ってきたの」
「そうですか。ところで、どうやって入ったんですか?鍵はかけたはずですけど」
 
 
 親でもないし、緊急事態でもないのだから勝手に入ってくるなんてできるわけがない。
 害があるわけではないけれど、普通では考えられない。
 
 
「ああ、隆二から預かっていたのよ」
 
 
 なんでもないことのように告げた名前に驚いた。
 
 隆二というのは私の父親の名前だ。
 どうして父を知っているのだろうか。
 そして、2人は父が私のアパートの鍵を預けるような関係なのだろうか。
 次の句が出てこない私を見て、店長はさらに言葉を続ける。
 
 
「実は幼馴染なのよ。私と旦那と、隆二はね。だから、恵梨香になにがあったのか大体のことは知ってる」
 
 
 一瞬、思考が停止した。
 
 知っていた…私の身に起きたことも、私がなにをしたかも。
 すべて知っていたというのか。それで私を雇ってくれていたのか。
 なんてことなのだろう。
 
 言葉を発することができない私を無視して店長は話を続ける。
 
 
「海野君の傍にいることが、怖くなった?」
 
 
 ああ、この人はすべてをわかっているのだ。
 
 私の気持ちも、なにもかも。
 
 だから、ここにいてくれるのだ。
 
 
 正直、騙されていたのだと思った。
 それでも、なにも言わずにいてくれたことも、知らないふりをしてくれたことも嬉しかった。
 
 私は守られていたのだ。
 
 
「私は人と関わりたくないんです」
 
 
 この言葉を音にしたのは初めてかもしれない。
 
 言葉の重みが心にのしかかる。
 こんなに苦しいものだったのかと、初めて認識した。
 
 今まで、どうして声に出さなかったのか理解した気がする。
 人と関わりたくないと思っていても、私は人と関わりたかったのだ。
 
 人の中で生きていたかった。
 
 怖いからという理由で、人を遠ざけて距離を置いていた。
 傷つくことが怖くて、傷つけられることも、傷つけられることも、すべてを拒絶したのだ。
 
 
 海野さんと一緒にいることが楽しくて、安心してしまうから、私自身が怖くて彼を遠ざけてしまった。
 結局は、海野さんを傷つけて、私自身も傷つけた。
 
 
「人と、関わりたくない」
 
 
 それを言葉にしただけで、なにもかもを理解してしまった。
 
 私の醜さにも、逃げているだけであることも、本当は怖くて仕方なかっただけであることも。
 
 海野さんに、心を許しそうになっている自分自身のことが怖いのだ。
 
 それは、私が傷ついてしまうからで。私が、傷つきたくないから。
 
 私は、彼から逃げたのだ。私の弱さが故に。傷つきたくないからという醜い理由で。
泪-rui-
 
 
 
 
  

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    泪-rui-
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